HPに「眺めの良いいえ」竣工写真をアップしました、是非ご覧ください。
ヴィム・ヴェンダース監督の映画「パリ・テキサス」
あまや座さんで上映との事で脚を運んできました。
よれよれのスーツにキャップをかぶって荒野を彷徨い
歩く主人公、トラヴィスの姿から始まる映像。
どうしようもない、どうにもできない”何か”を抱えた
トラヴィスの空虚な表情にぐっと惹きこまれてしまいます。
はじめてこの映画を見たのは学生の頃、当時の自分の状況と重ね合わせながら
食い入るようにブラウン管を眺めていたのを覚えています。
好きな映画を劇場で見れるのは幸せな体験ですね。
「かこむ、暮らす。」植栽、外構の工事に移りいよいよ現場も終盤。
造園家さんに植栽を打ち込んで貰うと急に”すまい”の雰囲気が漂って来ます。
いつも感じる事なのでなぜだろう?と考えてみたのですが、おそらく植栽が
入る事で建築の表情がほころぶからだと思います。
竣工間際の建築には”おろしたての運動靴”のような、まだ土地と馴染んでいない
ぎこちなさを感じます。
そこに緑のおおらかな曲線が入り、その緑が風で揺らぐことで建物の表情が
ぐっと和いで来るのです。
人工物である”建築”と自然の”庭”がうまいバランスで溶け合うと人にとって
快適な場所が生まれます。
そんな絶妙なレシピを求めて設計を深めて行きたい思います。
JAZZピアニスト、セロニアス・モンクのソロアルバム。
モンクをはじめて聴いたのは「ブリリアント・コーナーズ」
というアルバム。
なんだか”ごちゃっ”とした音楽だなぁ、とあまり良さが分からずに
その後積極的に聴こうとは思いませんでした。
今年のお正月休みにソロだとどんな感じなのだろうと買ってみたのですが、
これがとても良い。
1曲目の「パリの四月」からモンク独自の世界に惹きこまれます。
少しずれたリズムで打ち込むように鳴らされるピアノの音
中毒性があり、気が付くとこのアルバムを聴いてしまいます。
懐の深そうな音楽、しばらくは”モンクの世界”に浸ってみたいと思います。
楽しい事、凄いもの、ちょっと気を向ければたくさん周りにあるものですね。
ライトといえば「落水荘」
それくらい有名な住宅ですが、トレースするのはなぜかいつも後回しに。
というのもプランがスカッとせず、床のレベルもまちまち、
構造も複雑で建物の全体像がなかなか掴みづらいからです。
建築関係の人でも落水荘のプランがすんなり出てくる方は少ないのでは。
そこで今回はまず「落水荘」の構造を理解する事から始めてみました。
かなりざっくりと構造をとらえると
➀ 川べりの岩盤と垂直方向に4本のコンクリートの梁を打ち込む。(基礎はない)
➁ 川岸から遠い方向に煙突、設備を内包するコアとなる石積みの壁を立ち上げる。
➂ 梁と石積みの壁が建物の足腰となり、そこに抽斗を置くようにキャンチレバー
した床面を積み上げてゆく。
応援団の旗持ちのようなイメージでしょうか(^^ゞ
基礎が無い、建物全体でキャンチレバーを支える
というかなり無理をした特殊な構造。
いいかえれば大胆で独創的、ライトにしか決断できない勇気ある建築です。
基本構造を理解した上で改めてプランをじっくりと。
4本の梁のラインと、コアとなる石積みの壁を目印として平面を見ると
全体の構成がすっきりと見えて来ます。
「落水荘」は唯一無二の建築ですが、
読み込んでゆくと「ロビー邸」のキャンチレバーのしくみを90°づつ
角度をずらしながら重ねた構成と捉える事も出来ます。
”暖炉”を中心に据え、そこから水平方向へ空間を伸ばしてゆく。
ライトの流儀は初期の頃から脈々と繋がっているのですね。
定期的に行う「名作住宅トレース」なにが良いかというと
トレースするために資料や写真、図面をなめるように眺める事。
なんとなく知っていると思っていた建築の構成、構造、デティールなど
あらためて発見、理解する事ができ”建築”がますます好きになります。
今後もコツコツ続けてゆこうと思います。
「川縁の家」冬晴れの空の下地鎮祭を行いました。
神主さんの祝詞を聴きながらクライアントさんの後ろ姿を
見ていると「期待に応えるようなお家に!」と身が引き締まる思いがします。
娘さんとご一緒に「鍬入れの儀」
父の胸に抱かれて鍬入れをした事、体の記憶として残るはず。
この後は改良工事、基礎工事と現場が進んで行く予定、
工務店さんと連携しながら丁寧に仕事をすすめて行こうと思います。
あたらしい計画「川縁の家」が動き始めました。
東側に道路、西側に散歩道と小川が流れる分譲地。
クライアントさんが「敷地を決める時、川のせせらぎの音が良かった。」
と言われたのを聞いて、共感したのを覚えています。
お店など設計する時は水盤をしつらえるのが癖になっていますが、
水の音は心を落ち着かせる力があると思います。
さっそく敷地の周りを散策、気になったのが道路と駐車場と庭の位置関係。
道路側から庭が丸見えのお家が多く、ちょっと落ち着かないなぁ・・という印象。
交通量の多い東側の道路側はクローズとし、
小川のある南西側へ開いたL字型の配置計画としました。
黒い板張りの外壁と2間半巾の寄棟屋根、キリッとした端正な外観となりそうです。
掃き出し窓は1間巾のものを並べる事が多いのですが、
今回は食堂・居間に分けて窓を配置。
それぞれの空間にそれぞれの光の陰影が生まれるはずです。
いつも颯爽とさわやかなクライアントさんご家族、
清々しい凛としたお家となるよう丁寧に仕事を進めたいと思います。
「かこむ、暮らす。」年明け最初の現場打合せ。
外部は塗装も含めほぼ完了、
日が差すとナチュラル色の外壁が鮮やかに映えます。
内部は塗装工事の下地処理が進んでいます。
ビス穴ひとつひとつ丁寧に処理してゆく職人さん、
矜持を持って仕事に臨む姿はカッコいいです。
いよいよ現場も終盤、ここからは打合せの度に空間が
変化してゆくので、現場に来るのが楽しみです。
個人で仕事をしていると仕事自体が愉しいからか、なかなか連休
をとりません。
なのでお正月休みは貴重な連休、読みたかった本を書店で買い込み
お酒を飲みながら日がな一日頁を捲る、なんとも贅沢な時間です。
まず読んだのは宮本恒一さんの「忘れられた日本人」
放蕩によって身を持ち崩した盲目の老人の語り「土佐源氏」や
女性達がケタケタと朗らかにエロ噺をする「女の世間」など
読んでいてしみじみと良いなぁ、と思いました。
万葉の時代に通ずるおおらかさ、健全さ、いじらしさ。
かつてはこんな人々が確かにいたんだなぁ、
と感慨深いものがあります。
つづいて深沢七郎さんの「楢山節考」
有名な姥捨て山の話し、読む前は民話に近い若しくは浪花節の
ような御涙頂戴のお話かと思っていたのですが
ドライで辛辣で、高齢の母を待つ身としてはいたたまれなくなる
ような凄い小説でした。
「月のアペニン山」もシュールでつげ義春さんの漫画を読んで
いるような世界観。
勝手なイメージで積極的に読もうとはしなかった作家でしたが
他の本も読んでみたくなりました。
「ふたつ屋根の下」のクライアントさんが、こんな感じでしたよ~
と昨夜の家の写真を送ってくれました。
しんしんと積もった雪景色の中、窓から漏れるオレンジ色の光。
”すまい”という場の意味や性格を鮮やかに示してくれる良い写真。
クライアントさんから頂く家の近況報告は、故郷を離れた一人息子の
便りが届いたような感覚(^^)でとても嬉しいものですね。
Sさんありがとうございました。