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2019.2.28

京都左京区にある「詩仙堂」
江戸時代の文人、石川丈山の山荘跡との事。

階段を奥に進んでゆく魅力的にアプローチ空間を抜け、建物へ入り縁側を
歩いてゆくとサツキの大刈込の庭が全方向から視界に飛び込んできます。
庭と建物がスカスカに抜けているので東屋に佇んでいるような心持ち(笑)
水平に張られた床面と華奢な垂直の柱のライン、そこまでも横方向へ連な
ってゆく空間、日本建築ってモダンですね。

入口の脇にひっそりとある”おくどさん”もなんとも魅力的な造形、
撫でまわしたくなります!

帰り際にもう一度庭を眺めようとすると仲良く母娘の背中が並んでいました。
男親子ではなかなかできないので少しうらやましいですね(笑)

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京都・奈良建築探訪手描きスケッチ
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2019.2.16

京都の高山寺石水院へ行ってきました。

京都駅からバスで小一時間ほど、栂尾の山中に佇む古刹。
日本最古のお茶園や「鳥獣戯画」など建築以外にも見どころの多い
お寺です。

来て良かったなと思ったのは畳の間からこの風景を眺めた時。
遠くに広がる山々の風景ももちろん良いのですが、少し武骨な
部材で風景を切りとる開口部のプロポーションが最高でした。

一間の幅に高さ1900㎜の開口、少し武骨な柱がまた良いのですね。
やはり設計の本質はプロポーション、実際の寸法をどう抑え決めて
ゆくかなのだなぁ・・・とあらためて感じた建築探訪でした。

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京都・奈良建築探訪手描きスケッチ
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2018.8.30

愛媛県内子の街並みに建つ「上芳我家住宅」木蝋産業で栄えた明治27年
に上棟された建物。

街道を歩いてゆくと建物の妻面が目に入って来ます。
3段に並んだ庇、黄色い土壁となまこ壁の組み合わせ、帆掛け船をモチーフにした
棟そびえる鳥ぶすま、堂々たる外観です。

正面に建つと2階に虫籠窓、1階に細い出格子が並ぶシャープな意匠、洗練されて
いますね。

平面構成は手前に店の間、座敷、中庭を挟んで離れ座敷という典型的な町屋プラン
規模が大きいのと、広い炊事場が取り付いているので豪勢な印象を受けます。

敷地全体をみると主屋のまわりに釜場、出店蔵、物置き、離れ部屋、作業場
など広い敷地にいろいろな付属建築物が付随しています。

中庭からバウンドした光が畳表をなめるように広がります、日本人のDNA
に刻まれた美しい陰影の情景。

中庭を囲む縁に設けられた水鉢、こういったなにげない室礼が場の雰囲気を
華やかにします。

最盛期には多くの作業員さんのおなかを満たすために大活躍したであろうレ
ンガのかまど、かわいらしい佇まいです。

きれいな切妻屋根のライン、中庭を通じて座敷に届く柔らかい光のひろがり方、
主屋と離れをつなぐ半屋外の縁側空間の豊かさ、
現代の設計者にとっても掬い上げるべきたくさんのヒントが埋まった住宅でした。

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その他建築探訪手描きスケッチ
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2018.8.25

学生の時にDOCOMOMOJapanでその存在を知り、ずっと見たかった木造の小学校。
最寄りのバス停から徒歩40分ととても行きずらい場所、しかも年に3回しか見学の
機会がない建築ですがやっとこ見ることができました。
建物を見て最初に感じた印象は「軽い」「明るい」、軽い明るいといえば鉄骨
造の特徴と思っていましたが、素材が木なのでさらに軽い印象。
こんな木造建築を1950年代に実現し未だに現役の小学校、これだけで猛暑の中てく
てくと歩いて来た甲斐がありました(笑)

設計は松村正恒さんによるもの、ライトの弟子にあたる土浦亀城さんの事務所で
修行をされた後、八幡浜市役所職員として多くの建物の設計をされた方です。

東校舎が特に魅力的でとても豊かな場所になっていました。
シンプルな架構にも関わらずとても豊かな空間が生まれているのは2つの理由
があると思いました。
ひとつは敷地の素晴らしさ、谷あいの小川の横に佇む校舎には水で冷やされた
涼しい風が吹き込み、窓一面に南側のミカン畑の風景を望む事ができます。
もう一つはスキップフロアを使った豊かな断面構成、廊下と教室の間に光庭を
挟む事で明るい学びの場が生まれています。

階踏み面350㎜蹴上110㎜と子供にも上りやすいおおらかな階段。

モダンな校舎に差し込まれたお伽話にでてきそうな遊び心たっぷりの図書室、
照明は山小屋にありそうなランプ、銀糸張りの天井、竹の輪切りで描かれた星座。
室内に飽きたら川面に張り出したベランダで風に吹かれて本を読む事もできます。
こんな素敵な図書室があったら一日中居てしまいますね(^^)
北欧の建築家アスプルンドの図書館のお話し部屋を思い出しました。

木造で明るく軽い素晴らしくモダンな建物を造り、その中に子供の想像力を刺激
するような物語のある空間をそっと挿し込む。
「日土小学校」かなり好みです!(笑)

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その他建築探訪手描きスケッチ
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2018.7.23

設計仲間のSさんに遠藤新設計の「加地邸」見学会の機会を設けて頂きました!
遠藤さんは建築家フランク・ロイド・ライトの高弟、ライトの設計手法を受け
継いだ濃密な空間を設計されます。

建物は山の中腹に建ち、自然の傾斜を生かしたスキップフロアの構成、
リビングを中心としたL型のプランニングとなっています。

玄関横にある外部のテラス空間、2mに抑えられた低い天井と分厚い大谷石
の壁で囲われた空間がとても心地よいです。

サンルームにある可愛らしい家具達、家具のスケールを縮める事で部屋が
広々と感じます。

上を見上げると空を切り裂くように走る軒先のシャープなライン
今回の見学で気になったのは「寸法の抑えかた」
階段の腰壁 700mm 階段の蹴上 160mm 椅子の座面 230mm
寝室からバスルームへの扉幅 580mm
普段の設計ではなかなかでてこない寸法、ライト流の華麗な装飾
に目が行きがちですが、あの空間の雰囲気はこうした絶妙な寸法
の抑え方にあるのだなぁ・・と感じ入りました。
やはり設計者は寸法、プロポーションの感覚とそれを図面上に落
としこむ能力が必須、今後も精進して行こうと思います。

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建築探訪手描きスケッチ
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2018.4.6

前川國男、最晩年の建築「弘前市斎場」
敷地西側の「岩木山」「杉山」東側へ広がる「りんご畑」と建物の関
係がしっくりと納まっています。

弘前公園からてくてくと歩いて行ったのですが斎場へのアプローチが
素晴らしい、一直線の道を進んで行くと右手に突然広場がパッと現われ
その先に雄大な「岩木山」の姿を眺める事ができます。
親しい人の死に対して戸惑う心が岩木山の雄大な姿を見ることで落ち着
き慰められる事でしょう。
また道がゆったりとした下り坂になっている事で、自然に斎場へ向けて
歩を進める事ができます。

この斎場へのアプローチを進んでいる時に思い出したのが北欧の建築家
アスプルンドの「森の火斎場」、前川さんの斎場と比較すると
「岩木山」→「右手にみえてくる小高い丘」
「ゆっくりとした下り坂」 → 「ゆったりとした上り坂」
というようにアプローチの情景が似ているように思えます、どちらも人
の心に寄り添った素晴らしいアプローチです。

坂を下ると深い屋根の掛かった車寄せが見えてきます、軒裏を見上げると
重厚なコンクリートの格子梁がどうぞと迎え入れてくれるよう。

建物の内部は岩木山のある西側へ「焼き場」りんご畑のある東側へ「待合」
その二つのブロックを渡り廊下で結ぶという構成になっています。
黄泉の国(焼き場)と俗世(待合)を橋(渡り廊下)で結ぶという設計意図です。

待合(俗世)

二つの世界を結ぶ橋(渡り廊下)

焼き場(黄泉の国)

炉前ホールは薄暗い空間で、トーンの低いザラッとした仕上げとな
っています。
このザラリとした壁面にトップライトから美しい光が落ちてくる様
子は中世の教会の内部のよう。

斎場はまさに人の生死に関わる場所、杉山に抱かれた控えめな外観
とずしりと落ち着いた素材で囲まれた室内 そして遠くに望む雄大
な岩木山の姿、敷地と人の心を丁寧に読み解いた素晴らしい建築で
した。

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その他建築探訪手描きスケッチ
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2018.3.5

沖縄建築ツアーで一番楽しみにしていた「銘苅家住宅」へ
軒先H=2100というものがどういう佇まいなのか楽しみです。

銘苅家のある伊是名島へはフェリーで向かいます。

フェリーを降りてバスに乗りやっとこ着いた「銘苅家住宅」
左側の石垣は招き入れるような曲面となっており、母屋の軒
先が雁行する様子はレストランのウエイターがどうぞこちら
へ!と手を差し出しているかのよう(笑)
カチッとした「中村家」よりもくだけたアプローチです。

なんといっても心地よかったのがこの雨端の縁側、座った時
の軒先の低さ、道路側の石垣との関係も絶妙で一度座るとな
かなか立上れません。

平面をトレースすると構成は「中村家」とほぼ一緒、ただ屋根伏せ
を掛けてみると「識名園」や「中村家」はところどころ無理してる
な(笑)という場所があったのですが、銘苅家は屋根の斜め45度の線
がきれいに柱の上に乗ってきます。
この佇まいは骨格の美しさも関係があるのだなぁ・・と感じ入りま
した。

つづいて立面と断面、
石垣、防風林のフクギ、低く雁行する軒先ラインがきれいに重なり
あい環境に馴染んだ立面となっています。
また特に気になった雨端部分の断面寸法、イラストに描いた青の
点線ラインが「中村家」雨端部分の外形。
やはり「銘苅家」の雨端は高さ、横幅ともグッと抑えられとても
親密なスケール感になっているのが良く分かります。

ちなみに北側も奈良の「新薬師寺」のような大らかで伸びやかな
外観でした。

やっと見学できた「銘苅家住宅」思ったよりも低いという感じ
ではなく「ちょうど良い」というプロポーションでした。
また「銘苅家」「中村家」を続けて見学できたため同じ構成を
とっていても外構えの計画や高さの寸法の抑え方でここまで印
象が変わるのだなぁ・・と実感しました。
とても実測スケッチ甲斐(笑)のある建物に出会えた沖縄ツアー、
設計に迷った時はまた訪れたい場所となりました。

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建築探訪手描きスケッチ
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2018.2.28

沖縄建築旅、続いては北中城村にある「中村家住宅」へ
18世紀中頃に建てられた沖縄最古の木造建築、沖縄の伝
統的な様式がみっちりとつまっています。

入口に立つと石垣で囲われた要塞のような佇まい、重心が低く
カッコいいです。
目隠し壁のヒンプンの石積もダイナミックで美しいです、風除
け魔除けの意味もあるようです。

平面を眺めると特徴が良く分かります。
風水に基づいた配置計画となっており一番良い方角の南東に客間
のアシャギ、もっとも嫌われる北西にフール(豚小屋)が置かれ
ています。
ヒンプンは表と裏の動線を振り分ける役割もあり、ヒンプンの前
には防風林としてフクギが植えられています。
屋根は四方からの風をやりすごす寄棟造りになっており、雨端(
アマハジ)をつくる事で日射を防ぐ深い軒下空間が生まれています。
風水を意識しながら雨と風を防ぎ深い陰をつくる、風土に寄り添
った美しい住宅です。

断面を見ると南斜面の土地を人工的に掘り込み、そこに建物をはめ
込んでいるのが分かります。
このことによりどの開口部からも下に石垣上に緑という風景が目に
入り、地面も石敷きとなっているためとてもモダンなコートハウス
のような印象が残りました。
イサムノグチやルイスバラカンはぜったい好きなはず!(笑)

民家のイメージを持っていたらとてもスタイリッシュでモダン
だった「中村家住宅」建築はやはり見ないとわかりませんね(^^)

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建築探訪手描きスケッチ
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2018.2.26

住宅デザイン学校の「沖縄建築ツアー」に参加して来ました。
沖縄の名建築を建築家伊礼さんと一緒に巡るというぜいたくなもの、
最初に訪れたのが「識名園」18世紀の終わりごろにつくられ、国王
一家の保養や外国使臣の接待に使われたようです。

とても魅力的な石垣でつくられた小径を進んで行くと、ウドゥン
と呼ばれる木造の御殿が現われます。
御殿というと「桂離宮」や「二条城」を思い浮かべますがこの建物
は桂離宮のような繊細さや二条城のような壮大さはなく、朴訥とし
たおおらかでやさしい佇まい。
分割して小さく掛けられた屋根のボリュームや、赤瓦と漆喰のやわ
らかなシルエットにより「御殿ですがなにか!」というような威圧
感(笑)がありません。
伊礼さんに教えて頂いた特徴は建物に中庭がある事とぐるぐる回れ
る回遊動線、この特徴を頭に入れて建物に入ってみます。

中庭があることで建物の中心にも光が届き視線が庭から庭へと抜け
てゆきます。
また中庭で雨水の処理ができることから屋根を小さく分割して掛け
ることができ、威圧的でなくゆったりと可愛らしい外観とする事が
できています。

こういう建物を見学すると屋根がどのように掛かっているのか気にな
ってしまうのは職業病。
平面をトレースしてグーグルマップを観ながらプランに屋根伏せライン
を落とし込んでみました。
平面をトレースすると中庭を抱え込みながらオレンジに塗られた回廊部
分が回遊動線を生み出しており、これがこの建物の大きな魅力になって
いる事が良く分かります!
中庭を取りながら屋根を分節して建物を小さくつくる。
住宅でもこの手法を応用できそう、ひとつ抽斗を増やしてもらったよう
な実りある見学となりました(^^)

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建築探訪手描きスケッチ
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2017.4.20

青山で開催されている「建築家・山田守の住宅展」へ行ってきました。
山田守といえば真っ先に思い浮かぶのは京都タワー・日本武道館など、
独特のヌメッとした造形が印象に残ります。

自邸でもやはりヌメッとした造形感覚が効いています。
コーナーの出窓や屋根の庇もR面に処理されており、階段も
シリンダーのような円筒形が外観に露出され少しSFチック
な今見ても新鮮な佇まいです。

この住宅ではピロティの上に浮いた2階がリビング(畳間)
になっていて南側はへの字に縁側が廻り込んでおり、手の
ひらを敷地の上にかざして陽だまりを掬い取ったような
イメージが浮かびます。
縁側には樹木の葉の影とともにサンサンと太陽が降りそそぎ
ピロティの浮遊感と相まってなんとも居心地の良い場所、猫
なら一日中ここでゴロゴロしてるはず(笑)
またへの字のコーナー部に柱がなく曲面ガラスで処理されて
いるため横方向の視線が切れる事なくヌメッと抜けていき、
曲面をうまく使う効果を実感する事ができました。

この住宅は住居+事務所の3階建ての併用住宅
通常1・2階を事務所(土足ゾーン)3階を住居(靴脱ぎゾーン)
とする事を考えますがあえて2階に住居部分を持ってくる事で
土足ゾーンと靴脱ぎゾーンが入れ子のように混じる面白い構成
家の中に街路がそのまま入り込んできて混在しているよう。
初期プランでは縦に貫く土足階段と靴脱ぎ階段の動線が3階で
外部空間となるバルコニーで交わるというとても豊かな動線計画
今でも参考になるところがたくさんありました。
4月23日までなのでご興味のある方はぜひ脚を運んで下さい!

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