あたらしい計画「母の家」が動き始めました。
なかなか思い入れの深いプランが出来たので、計画のやり取りを
振り返ってみました。
クライアントさんから最初にご相談があったのは1年半ほど前の事。
クライアントとクライアントのお母さまが住む住宅、
今あるお家を解体し、母が暮らしやすい家を建てたいとのお話。
僕自身現在実家の両親を家族と協力して見守っていることもあり、
自分の事のようにプランを考えました。
最初にまとめたのがこのプラン、
方形屋根をふたつ重ねそれぞれプライベートゾーンとパブリックゾーンを
割り当てるという建築的な構成を意識した案。
クライアントさんにも気に入って頂きましたが、お母さんが暮らす背景と
して少し固すぎるかなぁ・・とも感じていました。
もう少し簡素なお母さんの暮らしを支えるプランを、
ともう一度手を練り直す事に。
そんな時に頭に浮かび、計画の拠り所とした事がふたつあります。
ひとつは現調の時に目にした現在クライアントさんが住んでいるお家の南側に
伸びる心地よい縁側スペース。
もし今暮らしている空間の記憶を受け継ぐような場所が残せたら、
お母さまも安心して生活できるかなぁと思いました。
もう一つは建築家、ル・コルビュジェがスイスの湖畔に設計した「母の家」
コルビュジェが自分の母のために建てた18坪ほどの小さなお家。
暮らしを支えるための廻れる動線、しっかりと確保されたサービススペース。
母への思いが詰まった愛らしいプランです。
このふたつの手掛かりから練り直したのがこのプラン。
回遊動線を組み込んだシンプルな平屋とし、南側へは一直線に伸びるえんがわを
収納などの裏方のサービススペースの面積もきちんと確保し、
家事同線もお風呂→洗面→洗濯→物干しと一直線でつなぎました。
寝室から水廻りへの裏動線も確保しています。
地味ですが暮らしを支えるプランができたかなぁと思います。
時に自分の両親を想いながら手を練っていると、住宅設計はやはり暮らしに対する
愛のような感覚が大切なのだなぁと改めて感じる事が出来ました。