名作住宅スケッチ、
今回はメキシコの建築家ルイス・バラガン自邸をトレースしてみました。
バラガンの建築はいわゆる近代建築の”均一な一室空間”
(フィリップジョンソン/ガラスの家etc)とは異なる趣、
それぞれの部屋がそれぞれのキャラクターを持ち、プランの中央付近に
置かれた階段ホールが”ハブ”として各部屋を結びつけるという平面構成
がとられます。
「バラガン邸」は多層な床レベルや、立体的な回遊動線により”迷宮”の
ような空間ですがトレースをする事で”明快な構成” ”綿密な動線計画”
を持つ住宅である事が理解できました。
平面図、この住宅の大まかな構成を掴むために真ん中の”階段ホール”を
建物のコア(緑のラインを入れたところ、断面を合わせて見ると分かりやすい)
として捉えます。
すると
➀真ん中に1階/階段ホール 2階/ラウンジ 3階/メイド用パティオ のサービスゾーン
➁東側に床レベルの下がったガレージ・玄関ホール、その上に客室のあるゲストゾーン
➂西側に台所、食堂、上に寝室のあるプライベートゾーン
➃北側に吹抜けを持つリゆったりとしたリビングゾーン
大きく4つのゾーニングで構成されている事が分かります。
また図面で黄色く塗りつぶした部分がメイドさんが使う部屋、主動線と
交わる事なく買い出し、料理、洗濯と実に合理的な裏動線が計画されています。
「バラガン邸」は少し違うのかなぁ・・と思っていたのですが
やはり名作住宅には”明快な構成”と”練られた動線計画”あり!
今回のトレースで一番の嬉しい収穫でした。(^^)
またバラガン邸の特徴は室内の一つ一つのシーンがうつくしい事。
まずは”光”の風景について、一度壁で閉じた建物にいかに美しく
”光”を呼び込むか、バラガンの設計のテーマです。
a.玄関ホールに落ちてくる高窓からの光
b.野性的な庭を通じて差し込む動きのある午後の光(植物の影が壁に映りこむ)
c.白いスリガラスを通じてライブラリーに届く朝の静謐な光
野性的な庭と水盤もバラガン建築の欠かせない風景。
d.パティオに床面の高さに張られた水盤、不揃いに並んだ素焼きの壺
アルハンブラ宮殿を訪れた時に「目の前に現れた白い壁と水の音」に感銘を
うけたというバラガン、水面に遊ぶ光やジョボジョボという水の音が建築に
揺らぎや時間の要素を加えてくれます。
その他にも天窓から聖像に黄色い光が降りぐコーナーや、高い壁に囲まれ空と
対話する屋上テラスなど詩的な風景がところどころに表れます。
最後にもうひとつバラガン邸の見どころを、それは1階リビング庭に面した
大窓の外側に垂らされたカーテン、なぜ外にカーテン?
これは夕方に鳥が明りを目指してガラスにぶつかってしまうのを防ぐために
バラガンが後から付けたとの事、優しい詩人の人柄を感じます。
魅力的な居場所が多くついつい頁が増えてしまったバラガン邸、
この後もしばらくバラガン建築をトレースしてゆきたいと思います。