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2021.10.8

川上弘美さんの本。
袖ふれ合った人との縁と、失われてゆくものの物語。

この小説の中のセンセイのような存在は、僕の中にもあるような気がします。

僕をあぐらの中にすっぽりと収めてコーヒー豆を削っていた祖父の手の温もりや、
学生時代に「まぁ飲め。」とビールをついでくれたバイト先の店主の声のあたたかさ。
その存在やその時の空気の匂いのようなものを、今もありありと思う浮かべる事が出来ます。
人との出会いは時が経てば必然的に離れてゆきますが、その時に体に沁み込んだ
記憶はずっと、そっと自分の背中を支えてくれているような気がします。

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2021.10.4

川上未映子さんのエッセイ「きみは赤ちゃん」。
ご自身の出産をめぐるさまざまな事を、怒涛の勢いで書き下ろしています。

自分が新米パパだった頃に読んでいれば、もう少し戦力になれかも・・・
なので近くの新米パパにあげる事に決定。(^^)
もちろん普通にエッセイとして読んでもあっという間の面白さです。

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2021.9.24

学生時代に札幌の文教堂で手に入れた藤原新也さんの本。
もう20年以上手元に置いています。
先の見えない甘ったれた自己嫌悪にまみれていた20代
この本をお守りのように持ち歩いたのを覚えています。
この一月近しい人がパタパタと亡くなり、
久しぶりにこの本を眺めたくなりました。

「ちょっとそこのあんた、顔がないですよ。
 いのち、が見えない。
 生きていることの中心(コア)がなくなって、 ふわふわと綿菓子のように軽く甘く、
 口で噛むとシュツと溶けてなさけない。
 しぬことも見えない。
 (中略)
 死は生の水準器のようなもの。 死は生のアリバイである。~死を想え~」

生きる事ばかりではなく、たまには月を眺めて死を想う。
そんな時間も大切ですね。

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2021.8.23

フランク・ロイド・ライトの住宅作品のトレースをするのに
関連の書籍をいくつか読んでいるのですが、
その中でもまとまっていて読みやすかった本。
ライトの歩みや、それぞれの時代の代表作がちょうど良いボリューム
で納められており、なによりカラー写真が豊富で眺めていて楽しいです。

この本のなかにライトらしからぬ?言葉が載っていました。
「裕福な人間のための大きな住宅ならば誰でも建てる事ができる。しかし、
 中流家庭のために美しい住宅を設計すること  そう それこそが建築家の気概を示すものなのだ。」

富裕層からの依頼がこなくなった負け惜しみ(笑)ともとれますが、いえいえこの言葉こそ住宅建築家の”矜持”なのだと思います。

またこんな言葉も
「最終的に建築家の価値を決めるのは、いかに自分のやっていることを愛しているかである。」
ライトの言葉は深いです。

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2021.8.16

「山のパンセ」の著者、串田孫一さんの本。「ギリシア神話」
串田さんの飾り気のない淡々とした文体のおかげで、
すんなりと楽しく読む事ができました。

こうした”神話”や「遠野物語」のような”民話”はお説教くさくなく
また隠された意図もなく、清々と読む事ができますね。
聖書で「右の頬をうたれたら・・・」などといわれても
うーん、ちょっとそれは・・・という感じですが。
「女神アテナが人間のアラクネと機織りの腕比べをした。
自分よりうまかったので織物を真っ二つに割き、アラクネを蜘蛛にしてしまった。」
こっちのほうがお茶目で、そういうもんだ!と腑に落ちますね。
落語の「あくび指南」のよう。

もちろん人々の無意識の世界に支えられている神話、民話は奥が深いのですが「意味」や「私情」に囚われる事なく朗らかで健全な話だと感じました。

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2021.8.11

建築家、内藤廣さんの本。
編集者の建築に対する問いに、ひとつづつ著者が答えて行く構成。
内藤さんの文章は言葉が平明で、変に抽象的な話になる事もなく
すっと頭に入って来ます。

共感したのが、コロナ後に使われるようになった「新しい日常」
という言葉が気に入らないという文章。
以前「美しい国」という言葉が出た時もうすら寒い思いをしましたが、
この「新しい日常」という言葉も妙に軽く、壁に貼られた標語のように
体温を感じません。
この生理的な違和感を、おかしいと感じ言葉にできる感性を持ち続けて
いるからこそ内藤さんのファンが多いのだと思います。

日々の仕事の中でリセットしたあなと感じた時、内藤さんの本を
読むともう一度新たな気持ちで「建築」と向きあう事ができます。

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2021.7.28

解剖学者、養老孟司さんの本を読んでいるとよく出てくる
「ああすれば、こうなる」
全てをコントロールしようとする脳の中にある”意識”は
「ああすればこうなる」が大好き、なぜなら脳が気持ちいいから。
ところが”自然”である体はそうはいかない。
すぐ出しゃばってくる”意識”などあんまり信用しちゃいけないよ(笑)
というお話。

その”意識”の居場所を「Φ」理論をもとに探ってゆく推理小説のような本。
読み応えがある本ですが「意識」がどこにあるのかは、やっぱり分からない
なぁ・・という感想。
砂漠に水を撒くような話ですが、どんどん突き詰めて行くと「詩」や
「禅」の世界に近づいてゆくのが面白いですね。

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2021.7.14

岡倉天心の「茶の本」
久しぶりに読み返してみました。
建築家フランク・ロイド・ライトがハッとしたと読んだ
というのは道教、老子の思想を紹介した部分でした。

「建物の現実は四方の壁と屋根からなるのではなく、
        その中に住む空間から成るのです。」

西洋に対する東洋の文化、道教から禅への繋がりから
利休の最後まで、薄い冊子ですが底の深い本です。

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2021.7.3

最近ライトの本や図面を見返しています。
この本ももう10年程前に手に入れた本なのですが、ライトの圧倒的な
デザイン密度に対するアレルギーからなかなかきちんと読めずにいました。
ただ、ライトの基本的な設計にたいする考え方を理解した上で読み返すと、
とても良くまとまった分かりやすい本でした。
またライト手描きのパースや家族への手紙など、袋とじになった付録が
たくさん入っていて、飛び出す絵本を読んでいる時のようなワクワク感
があります。

コルビュジェやミースに比べて近寄りづらい印象のあるライトの建築。
図面の奥にある設計手法、思想などを探ってゆくと、
建築の本質、「種」のようなものを常に意識していた、骨太で普遍的な
建築家であった事を今更ながら再確認することが出来ます。

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フランク・ロイド・ライト
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2021.6.12

武田百合子さんの本、「言葉の食卓」
淡々としたどこか日記のような文体なのですが、独自の
感性が行間から滲み出ていてとても魅力的なエッセイです。
平明な言葉のなかにユーモアや、恐怖感のようなものを含んでいて
ぐっと惹きこまれてしまいます。

「上野の桜」というエッセイの中で、
古道具屋で買った時計を手にぶら下げて持ち帰る場面の描写があります。
「地下鉄のりばの近くまできたら、紙包の中の時計が鳴り出した。
 雨上がりのうっすら西陽が残る路上で、
 いやにゆっくりと間を置いて響き渡る。
 男を一人梱包、内緒で持ち運んでいる気分。」

「男を一人梱包、内緒で持ち歩いている気分。」なんて言葉、
なかなか書けるもんじゃないですよね。
たぶんこの本の通り、ユーモアがあり、少し怖く、凄みのある
魅力的な方だったのでしょうね~。

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