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2020.7.30

ミヒャエル・エンデ「モモ」
時間どろぼうとそれを取り戻す女の子の物語。
モモのできる事は
あいての話を聞くことと、時間をかけて待つこと。
あたりまえでいて、みんななかなかできないことですね。

この本のなかで「そうだよね!」と膝を打つ思いをした文章
があります。
それはモモの友達、道路掃除夫ベッポが自分の仕事への哲学を
打ち明ける場面、

「なぁ、モモ、」

と彼はたとえばこんなふうに始めます。

「とっても長い道路を受け持つことがよくあるんだ。
 おっそろしく長くて、これじゃとてもやりきれない、
 と思ってしまう。」<中略>

彼はしばらく口をつぐんで、じっと前の方を見ていますが、
やがてまた続けます。

「いちどに道路全部のことを考えてはいかん、わかるな?
 つぎの一歩のことだけ、
 次の一呼吸のことだけ、
 つぎのひとはきのことだけを考えるんだ。
 いつもただつぎのことだけをな。」

またひとやすみして、考え込み、それから、

「するとたのしくなってくる。
 これがだいじなんだな、たのしければ、仕事がうまくはかどる。
 こういうふうにやらにゃだめなんだ。」

自分のペースで、楽しんで仕事と向き合う。
あたりまえのことをあたりまえに。
とても良い読書体験となりました。(^^)

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2020.7.19

建築家ル・コルビュジェの一番弟子ヴォジャンスキーが
師について綴った本。
短い文章でまとめられており、コルビュジェのスケッチ
の挿絵や写真も美しいです。

同じ巨匠と呼ばれる、フランクロイド・ライトやミースは
自分の世界をつくり、一つの権威としての立ち振る舞いを
確立させていった人達。
一方コルビュジェはそういった世界に収まる事を好まず、
独自の歩みをやめなかった人。
社会的にも政治的にも自由であろうとしたがゆえに、数々
の妨害や批判を浴び続け戦い続けた建築家。

そんな数々の修羅場を潜り抜けてきた重さを感じさせず、
茶目っ気のある飄々とした佇まい。
そんなコルビュジェの生き方こそが独自の魅力を放ち、
敬愛さて続けている理由なのだと思います。

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2020.6.30

なんだか少し疲れたなぁ~、という時に柚木さんの本をめくると
心が元気になります。
柚木さんから生まれるなんの衒いもない、色、かたち、リズム
がすっと体にはいってきます。

「何をやってもいいんだ。やるなら嬉しくなくちゃ、つまらない」

柚木さんのつくる嬉しさの波動のようなものが伝わってくるから
こそ、見ていて元気になるのでしょうね。
ぼくも「建築」にそんなふうに向き合えたらと思います(^^)

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2020.6.24

建築家、永田昌民さんの軌跡を追った本。
永田さんは自分の作品について理論的に話す事はあまりしなかった方。
この本ではクライアントさん、作り手のインタビューから永田さんの人柄が
浮かびあがってきます。
本の中に、永田さんが「いえ」の原風景について書いた大好きな文章があります。

「やけに広い玄関、その横にある疑似西洋の応接間、ちゃぶ台のある茶の間、
 そしてあたたかい電灯の下での団欒、茶の間に続く広いが少し暗らい台所、
 低い流し、カマド、柱にはってあるへっついの神様のお札。・・・・
 合理的でもないし、近代的でもないかもしれないが、「いえ」そのものを
 五感で感じ取れる。
 なんとなく素朴で、おおらかであたたかい。 
 そこには家族がいる。
 団欒がある。 
 住むという実感がある。
 細やかな生活の襞がある。
 そして綿々として続いてきた生活の証がある。」

永田さんの「すまい」「くらし」に対する率直で、ちょっと照れたような
あたたかい視線を感じる事ができます。
こんな設計者のスピリットを受け継いで、日々の仕事に丁寧に向き合って
ゆければと思います。

 

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2020.6.5

解剖学者、三木成夫さんの本。
ある方に教えて頂いた本なのですが、面白くてすぐに読み終わって
しまいました。
「こころははらわたとつながっている」「内臓の感受性」
はっとするような言葉、洞察がやさしい語り口で綴られています。
人の中には否応なく自然が組み込まれており、それゆえ人間は
ひとりぼっちではない。読んでいて少し安心しました。(^^)

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2020.5.23

建築家ルイスカーンのドローイング集。
実際には施工されずアンビルドとなったドミニコ修道院の
エスキス、ドローイングが時系列で並びます。

イエロートレぺの上に引かれた殴り書きのようなスケッチや
コラージュ作品のような美しい配置計画。
カーンが2年に渡り、格闘しながら建築を追い定めてゆく様子を
眺める事が出来ます。
決して流暢なスケッチではありませんが、太い鉛筆でぐりぐり
と引かれた線がカーンの人柄を表すようでとても魅力的です。

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2020.5.1

大橋富夫さんが撮った東京の風景に、
建築家の益子さん、永田さんが文とスケッチを書いた本。
今から50年ほど前の街の景色、
大切に読まれてきた古書のように掠れ、汚れていてほっとします。

どこぞの新都心のツルっとした風景にはどこにも身を寄せる
場所がありませんが、この本の中の街の風景はふらりと歩い
てみたくなる懐の深さがありますね。
町の記憶のしみは、良く生きてきたおじいちゃん、おばあちゃん
のしわやしみと同じもの、ひとを安心させるなにかがありますね。

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2020.4.21

思うところがあり養老孟司さんの本を読み返してみました。

現在の「都市化」した社会は、ものごとを「同じ」というくくり
でまとめて行く抽象化、「脳化」した社会で、「意識」が先行し
キリン・ゾウ・ネズミ → 動物
動物・植物・菌類 → 生物 
生物・無生物 → 物質 
と同じを繰り返し、統合してゆきます。
こうした分類の頂上に統治者であるGOD(神)が存在する一神教的世界
世界を同じ規格で統一しようという「グローバリズム」の考えかたですね。

他方、「自然」は「違う」を繰り返し、意識よりも「感覚」、脳よりも
「身体」が先行する多神教的世界。
「なんか違うんだよな~」とか
「生理的に受け付けない」
といったセリフは「意識」ではなく「感覚」が処理したアウトプットでしょう。

今の世の中はこの「同じ」の繰り返しがそろそろ限界来ているのかもしれ
ませんね。
養老さんの本は普段モヤモヤしているところに焦点を当て、ズバッと
切断してくれるので読んでいて面白いです。

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2020.4.17

フランスの哲学者ガストン・バシュラールの本
空間の原初のイメージについて書かれいます。
正直文章は難解です。(僕にとっては)
詩集を読む感覚で項をめくってゆくのがちょうど良い感じ。

「身をひそめることのできるものだけが、強烈にすむことができる」

「生は幸福にはじまる。それはかくまわれ、まもられ、家のふところ
に温かくいだかれてはじまるのだ」

家のふところ、とても良い言葉ですね。
うまく説明はできないけれどとても大切な事、そんなものが書かれて
いる本だと思います。

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2020.4.10

石工を経てパリの屋根裏部屋でカルトと呼ばれる手札を
書き続けたロベール・クートラス。
繊細で、小心で、子供のようにはにかみ、疑い深く、
みんなに愛されたいと願っている。
クートラスの絵を見ていると、
ちいさい頃にいつも持ち歩いていた毛布の手触りや、
宝箱にこっそりしまっていた美しい鳥の羽の様子。
雨の日のえんがわのしん、とした空気
いろいろな古い記憶が呼び起こされて来ます。

クートラスのカルトにはそういった記憶や夢想を
呼び起こす不思議な力があると思います。

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