愛媛県内子の街並みに建つ「上芳我家住宅」木蝋産業で栄えた明治27年
に上棟された建物。
街道を歩いてゆくと建物の妻面が目に入って来ます。
3段に並んだ庇、黄色い土壁となまこ壁の組み合わせ、帆掛け船をモチーフにした
棟そびえる鳥ぶすま、堂々たる外観です。
正面に建つと2階に虫籠窓、1階に細い出格子が並ぶシャープな意匠、洗練されて
いますね。
平面構成は手前に店の間、座敷、中庭を挟んで離れ座敷という典型的な町屋プラン
規模が大きいのと、広い炊事場が取り付いているので豪勢な印象を受けます。
敷地全体をみると主屋のまわりに釜場、出店蔵、物置き、離れ部屋、作業場
など広い敷地にいろいろな付属建築物が付随しています。
中庭からバウンドした光が畳表をなめるように広がります、日本人のDNA
に刻まれた美しい陰影の情景。
中庭を囲む縁に設けられた水鉢、こういったなにげない室礼が場の雰囲気を
華やかにします。
最盛期には多くの作業員さんのおなかを満たすために大活躍したであろうレ
ンガのかまど、かわいらしい佇まいです。
きれいな切妻屋根のライン、中庭を通じて座敷に届く柔らかい光のひろがり方、
主屋と離れをつなぐ半屋外の縁側空間の豊かさ、
現代の設計者にとっても掬い上げるべきたくさんのヒントが埋まった住宅でした。