「えんがわ薬局」が上棟しました、簡素な切妻の架構がきれいに並んでいます。
この薬局の主役は建物ではなく「縁側」と「庭」です。
きれいな建物を設計するより、人が安心しできる場所をつくろうと思いました。
少し長くなりますがそう思ったきっかけを書きます。
ちょうどこの設計が始まる頃、実家の母が急きょ病院に入院しました。
急な事に心を痛めながら、入院の手配や一人残された父のケアなどくたくたになり
ながら実家と病院への往復を続けていました。
その病院には外来棟と入院棟があり、その2つの建物の間になんてことはない中庭
がありました、中庭といっても簡単なバスケットコートと周囲に何本か植栽のあ
るどちらかというと殺風景な庭です。
母のお見舞いに行くときにいつもその場所を通るのですが、ある日「なにをやっ
てもうまくいかないなぁ・・」と重い気持ちで母の病室へ向かう途中、「キャ
ハハ・・」という嬉しそうな子供の笑い声が中庭から聞こえてきたのです。
ふと中庭へ目を向けると楽しそうに笑い転げる子供達・・・
カチカチになっていた心が一瞬ゆるみ、素の自分に戻る事ができました。
どうやら近くの保育園のお散歩の場所になってたようなのですがそんなささいな事
にずいぶんと心が救われた気がしました。
なんてことはない中庭、そこに子供たちの声、キャッチボールをする音、春めいて
きた風の匂い、外部からいろいろと豊かなものが遊びに来てくれるのですね。
病院へ行く時はどちらかというと少し気が重い・・・
その帰り道、薬局へ向かう途中に”えんがわ”と”庭”をつくり患者さんがふとい
つもの素の自分の戻れる、そんな場所ができたらなぁ・・
という思いを込めて、そして母の顔を思い浮かべながら設計しました(^-^)
いつか”えんがわ”に佇む人を見れるのを楽しみにしています。