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2021.10.30

「建築」という言葉があります。
職業柄「あの建築家の本に・・」
とか「あの建築は良かった・・」
などとよく使うのですが、
では「建築」ってなに?「建物」となにが
違うの、と聞かれるとうまく答えられません。

一般の人からすると
「要するに”建物”の事、一緒でしょ。」
で終わりの話しかもしれませんが、
「建築」に携わる身としてはどうもそれでは腑に落ちません。

分からない時には反対の言葉を並べてみる、
建築家の内藤廣さんの手法を借りて手元の紙の切れ端に反語を対になるよう書き込んでみました。

具体的に
「建物・building」として頭に浮かぶのは
コンビニやタワーマンションなど、
両方とも近代性、人間個人を中心とし合理性・経済性を基に組み立てて行くもの。
ある一定の空間で利益を最大化するための最適解の現れ。

「建築・aruchitecture」として浮かんでくるのは
ピラミッドや伊勢神宮のような社寺建築など。
両方とも個人を包括する「神」の存在を感じていた時代の精神から生まれたもの。
理性ではなく感情から組み上げられてゆくので不合理で無駄を許容する空間。

では信仰の解けた近代や現代には「建築」はありえないのか、という疑問がでてきますが

「個人」の脳みその中でああすればこうなると
「合理的にはじき出した」ものが”建物”
自分の存在を超えた「他者」にむかって感情を伴いそっと「捧げられた」ものが”建築”
という見方もできるような気がします。

普段何気なく使っている「言葉」をもう一度自分で捉え直してみる、
情報がひたすらに押し寄せてくる日常の中で大切な作業ですね。

Category
言葉
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2021.10.29

「かこむ、暮らす。」中庭をコの字に囲む屋根と、
そこから突き出した車庫部分の屋根。

道路面からの眺め、建物の低いプロポーションと水平に走る
屋根のラインがきれいです。

リビングソファから中庭への眺め。
東西をマンションに挟まれた敷地ですが、壁・屋根・開口部の取り方
を工夫し、「どの風景を切りとるのか」意識して設計する事で
プライバシーを保った居心地の良い眺めを生みだす事ができます。

建築の打合せの後は造園家さんとお庭の打合せ、
庭の一部に存在感のある”石のテラス”を計画しているとの事。
どんなお庭になるのか今から楽しみです。(^^)

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かこむ、暮らす。現場ブログ
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2021.10.27

染色家、柚木沙弥郎さんの本。
柔らかい雰囲気でとてもうつくしい装丁です。
頁をめくると柚木さんのチャーミングでハッとするような
”ことば”が収められています。

「現代はみんな忙しすぎて生活の実感がないよね。
ふと見た夕日が美しいとか、いつもの風景がちょっと違う、
そんな風に感じる心、生活の積み重ねで、感じ取るセンスは磨かれていく。」

「フランスでは、まず『今作ったものはどれだ』と聞かれる。
それはつまり、今あなたはどういうことに生きているかっていうこと。
これまでどんなことをやってきたとか、学歴や経歴とか、
過去の事は一切関係ない。
『今あなたは何をやっている?何に興味がある?』そいう考え方なんだ。
僕も生きている限りはそうあるべきだと思う。」

柚木さんのようにゆったりと、愉しんで、味わうように年を重ねてゆけると
良いなぁと思います。

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2021.10.25

「豆と暮らしと」建築工事はほぼ完了、外構廻りの施工が進んでいます。

住居と店舗の間を走る路地空間。
進んで行くとチョロチョロと水音をたてる水盤が、
水面に反射した光が外壁や天井でゆらゆらと揺れています。
カチッとした建築に”揺らぎ”のある緑や水、光といった要素が加わると
空間がぐっと豊かになります。

木工家さんにつくって貰った店舗入り口の”豆型手掛け”
建具屋さんが製作してくれた裏側の手掛けもシンプルでかわいいです(^^)

丸テーブルとソファが納まりぐっと住まいの気配が漂って来ました。

シナ合板で仕上げた簡素な佇まいのキッチン。
暮らしの中でも起点となる場所、ガシガシ使って育てて貰えれば嬉しいです。

Category
現場ブログ豆と暮らしと
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2021.10.22

つくばにある「だだ商店・だだ食堂」さんへ脚を運びました。
設計は中村好文さん、アプローチの湾曲した壁面が店内まで続いて行きます。

相変わらず見事な木製の階段手摺。
なめらかな木肌に吸い寄せられるように撫で擦ってしまいます(^^)

食堂は好文さんらしい外連味のないたっぷりとした空間。
ストーブはオーナーさんが選んだとの事、ジブリのアニメに出て来そうですね。

崖のように下がった南側にはワインの保管庫の入り口が、
2つあるので扉には№2の文字、サンダーバードの秘密基地のようでした(笑)

おおらかでユーモアがありながら洗練された好文建築の余韻を残しつつ、
「だだ商店」さんで手に入れた白ワインをチキンカレーと共に胃袋に流し込む。
なんとも幸せな一日となりました。

Category
3人の建築家ブログ
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2021.10.15

「かこむ、暮らす。」外部足場がなくなり、水平に伸びる屋根の
きれいな線が見えて来ました。

道路側からの立面も良い感じ、外壁の板張りが楽しみです。

リビングからの眺め、開口部のない向かい側の壁面がスクリーンとして
植栽を引き立てます。

中庭を柔らかく囲むように折れて行く壁面。

棟梁の丁寧な仕事、
外壁と軒裏天井は通気の関係上少し隙間を空けるのですが、
目に入っても良いようにと下地材を2重に重ねて外壁と
同色に塗装しています。
通気の穴もきちんと揃えて、棟梁のきっちりとした人柄を
感じる仕事ぶり。
こうした工事に係る人々の小さな心遣いの重なりが、
凛とした佇まいの建築を生みだすのだと思います。

Category
かこむ、暮らす。
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2021.10.13

水戸芸術館で開催中のピピロッティ・リスト展へ脚を運んできました。
本当に久しぶりの美術展、ふらっと美術館へそんな日常が戻りつつある
事が素直に嬉しいです。

ピピロッティの作品はどれも見ごたえがありとても良い時間が過ごせました。
また設計者としては展示の構成がとても興味深いと感じました。
通常の美術展では、垂直な壁面に水平方向へ作品を並べて行き、それを順番に
鑑賞してゆくという構成。
他の鑑賞者と目線の高さが同じになるため、作品と人が重なってしまったり
隣に順番を待つ人がいればいつまでもじっくりと・・という訳にもいきません。

今回の展示構成は、床に並べられたクッションに寝転んだり、ランダムに配置
されたベットに仰向けになって天井のスクリーンを見上げるという斬新なもの。
もちろん美術展で人が寝転んでいる、という風景も面白いのですが
寝転ぶ事で他の鑑賞者と視線が重なる事無く、周囲に人の気配は感じつつも
基本的には一対一で作品と向かい合えるのがとても良かったです。
壁面に作品を飾る、という既存のプログラムを一度疑って「鑑賞者と作品の
良い関係」を最初から問い直す。
建築を設計する時も大切な姿勢です。

コロナ禍の自粛生活、自分の内面を掘り下げる良い面もありましたが、
少しづつまた外と繋がってゆく事ができると良いですね。

Category
美術・展示会
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2021.10.11

「豆と暮らしと」ススキ揺れる秋の風景に佇む板張りの平屋、風情があります。

いつも生き物の話しをしてくれる息子さんのTくんとNちゃん、今日はトックリバチの巣を見せてくれました。
住まいをつくる事を生業とするものとして興味深々。

現場では板金屋さんが板塀の笠木を折っています。
シャープなスパッとした笠木、見ているだけで気持ち良い。(^^)

店舗の家具も納まりいよいよお店の雰囲気を感じる事が
できるようになって来ました。

打ち合わせ後にクライアントさんが
出張ドリップコーヒーを淹れてくれました。
監督さん、職人さんとみんなで美味しい最中を食べながら
珈琲を啜っていると、不思議とみんな静かに。
美味しい珈琲は人を無言にさせるなにかがあるようです。

ずっと楽しい「豆と暮らしと」の現場もあと少し、
最後まで仕事の愉しみを味わいながら、
良い住宅が出来るよう力を合わせて進みましょ~。

Category
豆と暮らしと
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2021.10.8

川上弘美さんの本。
袖ふれ合った人との縁と、失われてゆくものの物語。

この小説の中のセンセイのような存在は、僕の中にもあるような気がします。

僕をあぐらの中にすっぽりと収めてコーヒー豆を削っていた祖父の手の温もりや、
学生時代に「まぁ飲め。」とビールをついでくれたバイト先の店主の声のあたたかさ。
その存在やその時の空気の匂いのようなものを、今もありありと思う浮かべる事が出来ます。
人との出会いは時が経てば必然的に離れてゆきますが、その時に体に沁み込んだ
記憶はずっと、そっと自分の背中を支えてくれているような気がします。

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2021.10.6

ライトの中で一番好きな住宅「ケニス・ローラン邸」
車椅子のクライアントのために設計した住宅で、機能的にも意匠的にも
実に美しく解いています。
全て車椅子の目線から検討され、圧迫感が出ないよう家具の高さは目線
より下になるよう配慮されています。
ライト80歳頃の仕事ですが斬新なプランの裏側に、人の暮らしへの確か
な目線と愛情を感じます。

プランは円弧を重ね合わせて切り取った”フットボール”型プラン。
ガーデンルームからテラスへと繋がる円弧状の回遊動線が日々の
暮らしにどれほどの豊かさを生みだすか。
寝室や暖炉を眺めるソファコーナーはしっかりと壁に守られた
奥まった場所へ。
住む人の心に寄り添った、凛として優しい名作だと思います。

ガーデンルームからカーブした中庭を眺める楽しさ。
すっぽりと包まれたソファコーナーからはパチパチと燃える
炎と、ライトアップされた植栽を楽しむ事が出来ます。

一番良いな~ と感じたのが寝室の化粧台周りの設え。
車椅子の高さを考慮して窓と窓の間の鏡はカウンターまで下り、
本棚もちょうど手に取りやすい高となっています。
見慣れないバランスですがとても美しい壁面のプロポーション。
必要な機能をさりげなく美しく設える老建築家、カッコよすぎます。

Category
フランク・ロイド・ライト手描きスケッチ
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