ブログ

2021.10.6

ライトの中で一番好きな住宅「ケニス・ローラン邸」
車椅子のクライアントのために設計した住宅で、機能的にも意匠的にも
実に美しく解いています。
全て車椅子の目線から検討され、圧迫感が出ないよう家具の高さは目線
より下になるよう配慮されています。
ライト80歳頃の仕事ですが斬新なプランの裏側に、人の暮らしへの確か
な目線と愛情を感じます。

プランは円弧を重ね合わせて切り取った”フットボール”型プラン。
ガーデンルームからテラスへと繋がる円弧状の回遊動線が日々の
暮らしにどれほどの豊かさを生みだすか。
寝室や暖炉を眺めるソファコーナーはしっかりと壁に守られた
奥まった場所へ。
住む人の心に寄り添った、凛として優しい名作だと思います。

ガーデンルームからカーブした中庭を眺める楽しさ。
すっぽりと包まれたソファコーナーからはパチパチと燃える
炎と、ライトアップされた植栽を楽しむ事が出来ます。

一番良いな~ と感じたのが寝室の化粧台周りの設え。
車椅子の高さを考慮して窓と窓の間の鏡はカウンターまで下り、
本棚もちょうど手に取りやすい高となっています。
見慣れないバランスですがとても美しい壁面のプロポーション。
必要な機能をさりげなく美しく設える老建築家、カッコよすぎます。

Category
フランク・ロイド・ライト手描きスケッチ
Tag
2021.8.18

フランク・ロイド・ライトが事務所を開いて初めての仕事
「ウィンズロー邸」
この処女作から、
プレイリーハウス「ロビー邸」
ユーソニアンハウス「ジェイコブス邸」
と追ってゆくとライトの建築の変遷を理解する事ができます。

プランは矩形を分割したオーソドックスな構成ですが、半円形に突き出した
温室や八角形の階段室の塔など独特な造形感覚が表れています。

この住宅の一番の特徴はやはり安定感のある正面立面。
まだ流れるような「オープンプラン」も水平帯の「窓」
も見られませんが、
・軒の深いゆるい勾配屋根
・暖炉を中心とした平面
・水平ラインを意識した立面の構成
などその後のライトの手法の種となるものが随所に見られます。
また今見るとなんて事はない外観と感じるかもしれませんが、
当時周囲に建ち並んでいたのはチューダー様式やクイーン・アン様式
など装飾過多の住宅、この率直な外観を持つ「ウィンズロー邸」の出現
は鮮烈な印象を与えたと思います。

Category
フランク・ロイド・ライト手描きスケッチ
Tag
2021.7.18

ヴィム・ヴェンダース監督「ベルリン天使の詩」
冒頭に読まれる詩が好きで、たまに観返したくなる映画です。

子供は子供だった頃
腕をブラブラさせ

小川は川になれ 川は河になれ
水たまりは海になれ と思った

子供は子供だった頃
自分が子供とは知らず
すべてに魂があり 魂はひとつと思った

子供は子供だった頃
なにも考えず 癖もなにもなく
あぐらをかいたり とびはねたり
小さな頭に 大きなつむじ
カメラを向けても知らぬ顔・・・

また刑事コロンボで有名なピーターフォークが
本人役で出演しているのですが、まさに元天使という雰囲気があり
素晴らしい役どころ、こんな天使がいたら安心してしまいすね。

Category
手描きスケッチ映画
Tag
2021.7.5

フランク・ロイド・ライト「ロビー邸」をトレーススケッチしてみました。
ライトが手掛けたプレイリーハウス(草原の家)の中で最も有名な住宅、
片持ちで水平に伸びて行く深い軒のラインが印象的な住宅です。

そもそもプレイリーハウスとはどんな家?
当時アメリカで建てられていた背の高いクイーン・アン様式、西洋風のヴィラなど
はライトにとってアメリカの大地に相応しくない家でした。
もっと大地と結びついた”単純性”のある住宅を、と設計されたプレイリーハウスは
次のような特徴を持っています。

・無駄な高さを生む屋根裏部屋、地下室を削り、地表と結びつき水平に伸びる。
・暖炉を家の中心に据え、そこから空間が伸びて行く”オープンプラン”。
・居間食堂を2階へ上げてプライバシーを確保。
・外部空間へとつながるスクリーンとしての壁。
・建物と合わせて計画された家具、外構、植栽が生む”一体感”

東西に長い敷地一杯に建てられた「ロビー邸」
トレースしているといろいろな興味深い点が浮かび上がってきます。

・ゾーニング
南側と北側に二つの寄棟屋根が掛けられているのですが、

南側:プレイルーム・リビング・食堂etc    メインの部屋(仕えられる空間)
北側:暖房室・ランドリー・台所・使用人室etc 裏方の部屋 (仕える空間)

という明快なゾーニングとなっています、「ひとつの屋根にひとつの用途」
ルイス・カーン”サーブドスペース” ”サーバントスペース”と同じ概念です。

・構造
この家のメインの構造はなんとレンガ造、
耐火性が欲しいという要望に応えてのものですが、プレイリーハウスの理念、
「外部とつながるスクリーンとしての壁」を実現するためにとても興味深い
構造となっています。
それが「3枚おろし」の構造、
図面に引いた緑の線、外周面よりひとう内側のラインにレンガの太い柱や
厚い壁を設けここで荷重を受けています。
構造的な負担を軽減された外周面は組積造でありながらガラスを多用した
開放的な壁、カーテンウォールのような扱いが可能となっているのです。
またライン上には屋根裏を鉄骨の梁が走っており、ここから屋根をキャンティ
レバーさせる事で水平に走る庇と深い軒の出を実現させています。

・意匠
中心にある暖炉から伸びる垂直な煙突の壁のライン、
そこから対比するように水平に伸びて行く屋根のライン、
立面図をトレースしていると軒先から、窓割り、基壇や笠木の一直線に伸びてゆく
バンド、これでもかというほど水平のラインが強調されているのが分かります。

また二つの屋根を平行に配置する事でどうしても生まれてしまう”谷”の部分、
苦し紛れに雨水逃げの開口を空けていたり、
庇を突き出すために屋根の隅木を角柱からずらして処理していたり、
意匠を実現するために苦心惨憺している設計者の姿も垣間見え
なぜだかほっこりしてしまいます。

正直最初にこの家の平面図を眺めた時は、さほど流動的なプランとも思えず、
ステンドグラスの濃密なデザインなどから、漠然とオールドスタイルの家という
印象でした。
しかし本を読み、図面をトレースをしながら設計手法や思想を探ってゆくと

・あたらしい明快なゾーニング
・カーテンウォールを生みだす新しい構造
・水平・垂直で構成された斬新な意匠

凄いものがグッと詰まった傑作である事が理解できます。
ライトの師匠にあたるサリバンは建物の表層を”単純化”し引き伸ばした建築家、
ライトはそれを空間という次元で達成した天才です。

またちょっといたずら、という訳でもないのですがロビー邸を面の構成として
抽象化してゆくとどうなるのか、簡単なアクソメを描いてみました。
こうしてみると、後のミースやリートフェルトの建築、デ・スティル運動へ
つながってゆく構成の萌芽を見ることができます。
奥の深い住宅ですね。

最後にライトが読んだ時に頬を打たれたような思いがした、という
岡倉天心「茶の本の」一文を

 ひとつの部屋の実体は、
 屋根と壁によって囲み取られた空間にこそ見出されるべきものであって、
 屋根や壁そのものに見出されるべきものではない。

Category
フランク・ロイド・ライト手描きスケッチ
Tag
2021.7.3

最近ライトの本や図面を見返しています。
この本ももう10年程前に手に入れた本なのですが、ライトの圧倒的な
デザイン密度に対するアレルギーからなかなかきちんと読めずにいました。
ただ、ライトの基本的な設計にたいする考え方を理解した上で読み返すと、
とても良くまとまった分かりやすい本でした。
またライト手描きのパースや家族への手紙など、袋とじになった付録が
たくさん入っていて、飛び出す絵本を読んでいる時のようなワクワク感
があります。

コルビュジェやミースに比べて近寄りづらい印象のあるライトの建築。
図面の奥にある設計手法、思想などを探ってゆくと、
建築の本質、「種」のようなものを常に意識していた、骨太で普遍的な
建築家であった事を今更ながら再確認することが出来ます。

Category
フランク・ロイド・ライト
Tag
2021.6.17

偶然見たカネコアヤノさんの「アーケード」という曲のライブ映像、
久々にカッコいいもの見たなぁ~と嬉しくなりました。
満島ひかりさんの江戸川乱歩シリーズをはじめて見た時と同じ
ような感覚(^^)
颯爽と覚悟をもって表現している人はやっぱり格好良いです。

Category
手描きスケッチ音楽
Tag
2021.6.14

建築家ライトのイメージを素直に書くと、自信家で傲慢、スキャンダルにまみれた
お金持ちしか依頼できない巨匠建築家・・・怒られてしまいますね。(^^ゞ
帝国ホテルに見られるような圧倒的なデザインの密度もライトを近寄り難い存在に
しているのかもしれません。
ただライトの著作「自然の家」を読んだり、ユーソニアンハウスをトレースすると
常に建築の本質を見つめながら設計をしていた事が良く分かります。
僕の好きな、カーンやウッツオンも初期の頃はかなりライトの影響を受けている
し、弟子筋にあたるレーモンド、吉村順三さんもライトの流儀を受け継いで自分
の作品を生みだしています。
スキャンダルや数々の伝説はいったん頭から外して
本を読み、作品を直にトレースする事でライトの凄さを素直に感じる事ができます。

トレースしたのは「ジェイコブス邸」44坪ほどの平屋でライトが中流階級のために
手ごろな価格でコンパクトな戸建てを、と企画したユーソニアンハウスの代表作。
台所を中心として、寝室郡、LDへと空間が伸びて行くL字型の構成。
プランと天井の高さの関係や外観のメリハリのつくり方、つくづくうまいなぁ・・
と感じ入ってしまいます。

プラン、空間の魅力はさることながら経済性・合理性を実現させるために
さまざまな標準化、規格化を試みています。

・平面は2×4フィート600mm×1200mmのコンクリートスラブをグリットとし、
立面は330mmの水平バンドをモジュールとする。
・壁パネルは内外同時に施工が完了し、工場でのプレファブ化も視界に。
・屋根も2×4の規格寸法の垂木材を3段積みとする事で深い軒を生みだす。
・床下に温水パイプを廻した床暖房システム、快適な空間。

コストをコントロールするために規格化を進め、
大切な温度環境はきちんと床暖で確保。
近寄り難い巨匠がぐっと身近になったトレース体験でした。
最後にライトの言葉を
「ユーソニアン住宅は、慎ましやかな家である。
どこにも”大仰な”ところのない、住むための場所である。」

Category
フランク・ロイド・ライト手描きスケッチ
Tag
2021.5.19

西川美和監督「ゆれる」
吊り橋で起こった事件をめぐって揺れる兄弟の関係を描いた作品。
オダギリジョー、香川照之って本当にいい役者さんだなぁ・・・
と感じる映画。
大和田常務も好きですが、香川さんはやはりこういった微妙な感情
の襞を表現するのが本当にうまい俳優さんだと思います。

Category
手描きスケッチ映画
Tag
2021.5.10

ウクライナ出身のピアニスト、ウラディミール・ホロヴィッツ。
ホロヴィッツの打楽器のようなピアノの演奏と、
ショパンの東欧の気品と哀愁溢れる曲の相性が良く
何度も聞いてしまうアルバムです。

Category
手描きスケッチ音楽
Tag
2021.3.25

ルイス・カーンやウッツオンの作品をトレースして
思考をなぞってゆくと各々の建築家の設計手法のようなものが見えて来ます。

この二人に共通するのは「言葉」を疑うところから始める姿勢です。

例えば「図書室」を設計しようとした時、
いきなり資料集成を引っ張り出して面積の案分やコスト配分を検討するのではなく。
そもそも~本を読む~というのはどのような行為で、それにふさわしい場所は
どんな空間なのだろう、という「はじまり」から設計を始めます。

本の頁をめくるには、ひっそりと壁に囲われた静かな場所で、時折そっと風が
頬を撫でてくれるような場所が良い・・・ などと

今回はオペラハウスなど主要な作品のスケッチトレースを進めた上で見えて来た
ウッツオンの「設計の流儀」をまとめてみました。

あらかじめ分類され用意された「言葉」「場所」を疑い、
もう一度自分の体を通して自分なりの「統一性」を掴もうとする、
建築設計は奥が深く興味が尽きません。

Category
ヨーン・ウッツォン手描きスケッチ
Tag