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2021.3.25

ルイス・カーンやウッツオンの作品をトレースして
思考をなぞってゆくと各々の建築家の設計手法のようなものが見えて来ます。

この二人に共通するのは「言葉」を疑うところから始める姿勢です。

例えば「図書室」を設計しようとした時、
いきなり資料集成を引っ張り出して面積の案分やコスト配分を検討するのではなく。
そもそも~本を読む~というのはどのような行為で、それにふさわしい場所は
どんな空間なのだろう、という「はじまり」から設計を始めます。

本の頁をめくるには、ひっそりと壁に囲われた静かな場所で、時折そっと風が
頬を撫でてくれるような場所が良い・・・ などと

今回はオペラハウスなど主要な作品のスケッチトレースを進めた上で見えて来た
ウッツオンの「設計の流儀」をまとめてみました。

あらかじめ分類され用意された「言葉」「場所」を疑い、
もう一度自分の体を通して自分なりの「統一性」を掴もうとする、
建築設計は奥が深く興味が尽きません。

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ヨーン・ウッツォン手描きスケッチ
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2021.3.6

西川美和監督、役所広司主演の映画「すばらしき世界」
内容についてはふれませんが心を動かされる映画でした。
西川監督の作品は「ゆれる」「永い言い訳」などありますが、
どの作品も観ている時に少し落ち着かない気持ちになります。

西川映画の主人公は颯爽としたヒーローのような人間ではなく、
どっち付かづで、ちょっとした事で心を取り乱し、自分に都合の
悪い事は隠そうとする、そんな人物です。
つまりそれはそのまま観ている人の等身大の人物で、主人公に
自分を重ねて落ち着かない気持ちになるのだと思います。
だからといって批評的なお話しなのではなく
”人間ってそんなものだし、
それでも関係を築きながら自分なりに懸命に生きてゆくよね”
という人間に対しての共感、信頼が作品に流れているからこそ
多くの人が惹きつけられる映画になるのだろうと感じます。

後はやっぱり役所広司っていいですね~、あらためて凄いと思いました。(^^)

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手描きスケッチ映画
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2021.2.24

イタリアの映画「イル・ポスティーノ」
舞台はイタリアの小さな島、祖国チリから亡命してきた詩人
パブロ・ネルーダと、その郵便係に配属された主人公マリオ
の物語。

海辺でパブロが読んだ詩の感想を聞かれ、
「言葉に揺れる小舟のような気持ちだった」と答えるマリオ
パブロに(隠喩を)「うまくやったな」と褒められた時の嬉しそうな表情に
観ているこちらも思わず頬が緩んでしまう名シーン。
上質で粋な心に沁みる映画です。

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手描きスケッチ映画
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2021.2.22

言わずと知れたウッツォンの代表作「シドニーオペラハウス」
建築に詳しくない人でも、この帆船のようなシルエットはどこかで
目にした事があるはず。
シェル状の屋根構造を決めるのにとても苦労したようですが、
中世ゴシック教会の屋根のつくり方、6分ヴォールトを分節して繋げる
とあら不思議、そのままオペラハウスの屋根の構造に。
ウッツォンが意図したかは分かりませんが、中世の建築と現代の建築
の技術が繋がっている、というのはとても興味深い事です。

こちらが平面計画、海に突き出した半島状の敷地に1/5勾配の角度で振れた
大ホールと小ホールが寄り添うように並び、手前のレストランと合わせて
3つのボリュームが小気味よく配置されています。

大ホールの断面計画、
4枚のシェル状の屋根がとても美しいのですが、意匠的なものだけではなく
それぞれ
A → エントランスホール
B → ステージ(ステージタワーが入るよう高い空間)
C → 客席
D → ラウンジ
と一つの屋根に一つの機能があてがわれ、屋根の高さも下部の空間の用途と
呼応しています。

ただ残念ながらウッツォンが途中で仕事を降りてしまったため現状の
オペラハウスはこのような断面計画にはなっていません。

ウッツオンの感性で描かれた美しい屋根のライン、
その屋根を実現させたゴシック建築の技術、
そして屋根の大きさと呼応した機能的な平面計画、
建築の醍醐味を凝縮したような素晴らしい建築。
トレースするだけでも楽しいのですから、実際に空間を体験したら・・・
いつか訪れてみたいです。

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ヨーン・ウッツォン手描きスケッチ
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2021.1.22

昨年の夏ごろからウッツォンの図面トレースを続けています。
一人の建築家についてしばらく研究を続けていると、その建築家
のもつ感性や人柄、設計手法などを少しづつ理解することが
できとても楽しいです。

さて今回のスケッチトレースは「キンゴーテラスハウス」
20M角を壁で囲み、そこにL字のプランとパティオ(中庭)を入れ込む計画。
正方形の庭をL字に囲む平面はアアルトの「コエタロ」を思い起こさせます。

平面計画もさることながら、このプロジェクト最大の魅力はその”配置計画”
規格化したテラスハウスをネックレスのようにつなげて敷地に置いてゆきます。
モロッコやイスラムの街並みを彷彿させる造形、ウッツォンの建築は本当に
独特で興味深いです。

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ヨーン・ウッツォン手描きスケッチ
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2021.1.20

デンマークの建築家、ヨーン・ウッツオンがシドニーのオペラハウスを
設計した時の光と影の物語。

“シドニーのオペラハウス”といえば建築に詳しくない人でも写真をみれば
「ああ、あれね」と即座に分かる建物。
ヨットの帆のような美しいシルエットの屋根は、
一瞬で人の心を掴んでしまうなにかがあります。

この本を読むと、美しい建物を支えているウッツオンの明確な設計理念、
そして政治や経済によってその理念が無残に蹂躙され、ウッツオンが設計
の座を辞す事で建物が迷走してゆく様子をつぶさに追う事ができます。
一つの建築に詰まっている物語と熱量に圧倒されます。


*写真UTZUON-inspiration-vision-architecture より

この本の中で特に惹かれたのが
「ヨットの帆のような屋根にタイルをどう張り付けてゆくのか」
という難問(屋根の曲面が変われば全て特注のタイルとなってしまう)
にウッツオンが解決策を見つけるくだり。
「全ての曲率(曲げ角度)がおなじ球体から屋根のシェルを切り抜けば、
全て同じタイルを使って施工できる!」との閃き、まさに天才です。

ウッツオンの詩人のような感性と、天才の閃き、
後はタフにネゴシエートしてゆく図太ささえあればオペラハウスの運命も・・・

ただウッツオンの思想と乖離したインテリアが近々改修されるとの事。
改修にかかわるのは息子さんの”ヤン・ウッツオン”
息子さんの手によってウッツオンのオリジナルの思想に近い空間が
生まれる事を切に願っています。

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ヨーン・ウッツォン
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2020.12.28

オーストラリア「シドニーのオペラハウス」の設計者ヨーン・ウッツォンの
初めての住宅作品、ヘルベックの自邸。
奥さんと森の中をテント張って移動しながら敷地を探したり、
図面を描かずに現場で実物大の模型をつくって空間をスタディしたり、
ウッツォンの設計に対する独自性は最初からなのですね。
そういえば柳宗理さんも図面を描かずにいきなり手で石膏をこねてモノの
形を考えていたとか。

森の中に、黄色のレンガブロックの壁、木造の柱、ガラスで構成された伸びやかな
平屋、キッチンと暖炉をコアとしたオープンプランとなっています。
フランクロイド・ライトの横に流れる空間、
ミースの水平に伸びる壁とガラスの構成、
当時ストックホルムに建てられた茶室「瑞暉亭」などの影響を生けつつ、
暮らしやすそうなスカッとした構成になっています。

本に載っているウッツォン家族の暮らしの写真を眺めると、
子供たちがえんがわで寝転んだり、
台所でおかあさんとパンを切ったり、
暖炉の前でお父さんの膝枕で火を眺めたり、
この住宅で育ったら楽しいだろうなぁ・・と楽しい気持ちになりました。
構成の整ったきれいな空間構成と、そこで営まれる豊かな暮らしの風景。
住宅設計の大切なポイントをきちんと押さえた素敵な住宅です。

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ヨーン・ウッツォン手描きスケッチ
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2020.12.16

映画を見ていて、居心地のよさそうな部屋だなぁ~、魅力的なキッチンだなぁ~
などと気になってしまう事があります。
そんな時は紙と鉛筆を片手に映画の中のプランをトレース。

今回見た映画はメリル・ストリープ、ダスティン・ホフマン主演の
「クレーマークレーマー」
主人公の暮らすマンハッタンのゆったりとしたアパートメント。
正方形に近いバランスの良い部屋のプロポーションと、
キッチンをぐるりと廻れる回遊動線がとても心地よく住みやすそうです。

下の絵は離れ離れになる父子が、最後に手際よくフレンチトーストをつくる場面
胸にぐっとくるシーンです。

映画の中でも心地よさそうな場所は、やはりプランも魅力的なもの。
次は是枝監督の「歩いても歩いても」で、樹木希林さんが手際よく
料理を仕上げて行く”台所”を紐解いてみたいなぁ~と思っています。(^^)

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手描きスケッチ映画
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2020.11.4

プランでいろいろな案を練っていると、どの案が良いのか迷う時があります。
駄目なものはすぐに分かるので良いのですが、どちらも捨てがたいという時、
プランをじっと眺めていても答えがでません。

そんな時は平面図からスケッチを起こします。
立体的な絵になる事で、空間的なつながりや人の視線の交差など平面だけでは掴め
ない微妙な関係を読み取る事ができます。

上の絵はソファの配置を窓際にするか、壁際にするか検討したスケッチ。
壁際にソファを置き、ダイニングと斜めにつながる方が奥行きが生まれるか、
と思うのですがどうでしょか・・・(^^)

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手描きスケッチ
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2020.10.23

先週末、水戸芸術館で開催された野外上映会に脚を運びました。
はじめてこの野外上映会へ行ったのは5年前、映画は「未知との遭遇」。
芝生に寝ころび、夜空を見上げながら映画を楽しむ雰囲気にはまり
以来毎年通うことに。
小学生だった息子の背中もいつの間にかすっかり大きく(^^)
毎年の行事は家族の思い出になりますね。

今年の上映作品は「ブルースブラザーズ」
音楽も映像もパワーが溢れ、おバカな事にいかに魂をこめるかと
いうアメリカンスピリットを感じます。
1980年、世の中もまだ自由で元気な空気が漂っていたのですね。

上映会も事前予約制、消毒の徹底、ソーシャルディスタンスなど
苦労された事と思います。
ただ一つの物語を観に、夜空の下街の人々が集まるとても素敵な
イベント、来年も見れるとよいなぁ~~。

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手描きスケッチ映画
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