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2022.1.9

個人で仕事をしていると仕事自体が愉しいからか、なかなか連休
をとりません。
なのでお正月休みは貴重な連休、読みたかった本を書店で買い込み
お酒を飲みながら日がな一日頁を捲る、なんとも贅沢な時間です。

まず読んだのは宮本恒一さんの「忘れられた日本人」
放蕩によって身を持ち崩した盲目の老人の語り「土佐源氏」や
女性達がケタケタと朗らかにエロ噺をする「女の世間」など
読んでいてしみじみと良いなぁ、と思いました。
万葉の時代に通ずるおおらかさ、健全さ、いじらしさ。
かつてはこんな人々が確かにいたんだなぁ、
と感慨深いものがあります。

つづいて深沢七郎さんの「楢山節考」
有名な姥捨て山の話し、読む前は民話に近い若しくは浪花節の
ような御涙頂戴のお話かと思っていたのですが
ドライで辛辣で、高齢の母を待つ身としてはいたたまれなくなる
ような凄い小説でした。
「月のアペニン山」もシュールでつげ義春さんの漫画を読んで
いるような世界観。
勝手なイメージで積極的に読もうとはしなかった作家でしたが
他の本も読んでみたくなりました。

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2021.12.15

建築家、中村好文さんが監修したコルビュジェの本。
カップマルタンの地でCABANON(休暇小屋)がどのように構想されていったのか、
殴り書きのようなスケッチから実施図面まで建築の軌跡を追う事ができます。
また山口信博さんの装丁が本当に美しい、
本棚に飾って眺めるでけでも十分に価値のある本だと思います。

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3人の建築家
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2021.12.8

作家、小川洋子さんが選んだ内田百閒の作品集。
百鬼園先生のユーモアのある歯切れのよいエッセイは好きで
読んでいたのですが、小説ははじめて。

読んでみるとエッセイの淡々とした文体からは
想像がつかないような、夢と現を行き来する妖しい芳醇な世界。

「正しく古いものは、常に新しい」という言葉がありますが、
まさにそれを感じた読書時間となりました。

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2021.11.11

小川洋子さんの小説「博士の愛した数式」
諸行無常、桜の散り行く姿に思いを寄せるように
失われゆく時間と記憶に哀惜と愛しさを感じる本でした。

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2021.10.27

染色家、柚木沙弥郎さんの本。
柔らかい雰囲気でとてもうつくしい装丁です。
頁をめくると柚木さんのチャーミングでハッとするような
”ことば”が収められています。

「現代はみんな忙しすぎて生活の実感がないよね。
ふと見た夕日が美しいとか、いつもの風景がちょっと違う、
そんな風に感じる心、生活の積み重ねで、感じ取るセンスは磨かれていく。」

「フランスでは、まず『今作ったものはどれだ』と聞かれる。
それはつまり、今あなたはどういうことに生きているかっていうこと。
これまでどんなことをやってきたとか、学歴や経歴とか、
過去の事は一切関係ない。
『今あなたは何をやっている?何に興味がある?』そいう考え方なんだ。
僕も生きている限りはそうあるべきだと思う。」

柚木さんのようにゆったりと、愉しんで、味わうように年を重ねてゆけると
良いなぁと思います。

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2021.10.8

川上弘美さんの本。
袖ふれ合った人との縁と、失われてゆくものの物語。

この小説の中のセンセイのような存在は、僕の中にもあるような気がします。

僕をあぐらの中にすっぽりと収めてコーヒー豆を削っていた祖父の手の温もりや、
学生時代に「まぁ飲め。」とビールをついでくれたバイト先の店主の声のあたたかさ。
その存在やその時の空気の匂いのようなものを、今もありありと思う浮かべる事が出来ます。
人との出会いは時が経てば必然的に離れてゆきますが、その時に体に沁み込んだ
記憶はずっと、そっと自分の背中を支えてくれているような気がします。

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2021.10.4

川上未映子さんのエッセイ「きみは赤ちゃん」。
ご自身の出産をめぐるさまざまな事を、怒涛の勢いで書き下ろしています。

自分が新米パパだった頃に読んでいれば、もう少し戦力になれかも・・・
なので近くの新米パパにあげる事に決定。(^^)
もちろん普通にエッセイとして読んでもあっという間の面白さです。

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2021.9.24

学生時代に札幌の文教堂で手に入れた藤原新也さんの本。
もう20年以上手元に置いています。
先の見えない甘ったれた自己嫌悪にまみれていた20代
この本をお守りのように持ち歩いたのを覚えています。
この一月近しい人がパタパタと亡くなり、
久しぶりにこの本を眺めたくなりました。

「ちょっとそこのあんた、顔がないですよ。
 いのち、が見えない。
 生きていることの中心(コア)がなくなって、 ふわふわと綿菓子のように軽く甘く、
 口で噛むとシュツと溶けてなさけない。
 しぬことも見えない。
 (中略)
 死は生の水準器のようなもの。 死は生のアリバイである。~死を想え~」

生きる事ばかりではなく、たまには月を眺めて死を想う。
そんな時間も大切ですね。

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2021.8.23

フランク・ロイド・ライトの住宅作品のトレースをするのに
関連の書籍をいくつか読んでいるのですが、
その中でもまとまっていて読みやすかった本。
ライトの歩みや、それぞれの時代の代表作がちょうど良いボリューム
で納められており、なによりカラー写真が豊富で眺めていて楽しいです。

この本のなかにライトらしからぬ?言葉が載っていました。
「裕福な人間のための大きな住宅ならば誰でも建てる事ができる。しかし、
 中流家庭のために美しい住宅を設計すること  そう それこそが建築家の気概を示すものなのだ。」

富裕層からの依頼がこなくなった負け惜しみ(笑)ともとれますが、いえいえこの言葉こそ住宅建築家の”矜持”なのだと思います。

またこんな言葉も
「最終的に建築家の価値を決めるのは、いかに自分のやっていることを愛しているかである。」
ライトの言葉は深いです。

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2021.8.16

「山のパンセ」の著者、串田孫一さんの本。「ギリシア神話」
串田さんの飾り気のない淡々とした文体のおかげで、
すんなりと楽しく読む事ができました。

こうした”神話”や「遠野物語」のような”民話”はお説教くさくなく
また隠された意図もなく、清々と読む事ができますね。
聖書で「右の頬をうたれたら・・・」などといわれても
うーん、ちょっとそれは・・・という感じですが。
「女神アテナが人間のアラクネと機織りの腕比べをした。
自分よりうまかったので織物を真っ二つに割き、アラクネを蜘蛛にしてしまった。」
こっちのほうがお茶目で、そういうもんだ!と腑に落ちますね。
落語の「あくび指南」のよう。

もちろん人々の無意識の世界に支えられている神話、民話は奥が深いのですが「意味」や「私情」に囚われる事なく朗らかで健全な話だと感じました。

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