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武田百合子「ことばの食卓」
2021.6.12

武田百合子さんの本、「言葉の食卓」
淡々としたどこか日記のような文体なのですが、独自の
感性が行間から滲み出ていてとても魅力的なエッセイです。
平明な言葉のなかにユーモアや、恐怖感のようなものを含んでいて
ぐっと惹きこまれてしまいます。

「上野の桜」というエッセイの中で、
古道具屋で買った時計を手にぶら下げて持ち帰る場面の描写があります。
「地下鉄のりばの近くまできたら、紙包の中の時計が鳴り出した。
 雨上がりのうっすら西陽が残る路上で、
 いやにゆっくりと間を置いて響き渡る。
 男を一人梱包、内緒で持ち運んでいる気分。」

「男を一人梱包、内緒で持ち歩いている気分。」なんて言葉、
なかなか書けるもんじゃないですよね。
たぶんこの本の通り、ユーモアがあり、少し怖く、凄みのある
魅力的な方だったのでしょうね~。

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