建築家、永田昌民さんの軌跡を追った本。
永田さんは自分の作品について理論的に話す事はあまりしなかった方。
この本ではクライアントさん、作り手のインタビューから永田さんの人柄が
浮かびあがってきます。
本の中に、永田さんが「いえ」の原風景について書いた大好きな文章があります。
「やけに広い玄関、その横にある疑似西洋の応接間、ちゃぶ台のある茶の間、
そしてあたたかい電灯の下での団欒、茶の間に続く広いが少し暗らい台所、
低い流し、カマド、柱にはってあるへっついの神様のお札。・・・・
合理的でもないし、近代的でもないかもしれないが、「いえ」そのものを
五感で感じ取れる。
なんとなく素朴で、おおらかであたたかい。
そこには家族がいる。
団欒がある。
住むという実感がある。
細やかな生活の襞がある。
そして綿々として続いてきた生活の証がある。」
永田さんの「すまい」「くらし」に対する率直で、ちょっと照れたような
あたたかい視線を感じる事ができます。
こんな設計者のスピリットを受け継いで、日々の仕事に丁寧に向き合って
ゆければと思います。
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