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内藤廣さん「デザイン講義」
2017.7.12

いつかは読まねばと思っていた内藤廣さんの「デザイン講義」の本、
東大での講義を 構造・環境・形態 の3部に分けてまとめられた
ものです。
ページをめくるとほぼ活字でそれなりのボリュームのものが3部!
正直読み始めるまでに時間がかかりました。
ただ一度読み始めると、内藤さんらしい誠実で分かりやすい語り口
にぐんぐん引き込まれていきます。
また語り口は穏やかですが形態をもて遊ぶような建築をバッサリと
切り捨てたり、ほぼ哲学のような際どい話があったり読んでいて飽
きる事がありません。
印象に残った言葉は「構造講義」の中で妹島さんの建物に対して
「妹島さんは最小の部材で最大空間を構成する、(中略)近代建築
の真っ当な後継者。そこに自らの感性を加えることによって独特の
揺らぎをもたらしているところが面白い」
と評しています、妹島さんの建物をそうした視点で見た事がなか
ったので新鮮でした。
また「環境講義」のなかで記述を要約すると
「たとえば工学部の中で水はそれぞれの専攻で 建築の水・都市の水
・土木の水と分けられている。水が制度境界をまたぐごとに扱う分野
が変わるなんて本来おかしい、一気通貫でやるべき時代が来ている。」
「エンジニアリングの中では客観的なデータを扱うけれど、ほとんど
の事は脳の中で処理されている、いくら外部環境を整えたからといって
人間の最終的な満足には至らない、だから本当は脳科学と工学がどこか
で一体にならなければいけない。」
工学部の講義とは思えない内容ですね(笑) 
狭い境界設定をしてその閉じた環境の中で問題を解決しようという
姿勢は歪みを生むのではという内藤さんの警告です。
「建築」という狭いくくりに溺れる事なく、もっと広いフィールドで
自分の頭で考え、自分の体で感じたものを核にして進みなさいよ!
という若者に向けた内藤さんからのエールのような本でした。

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