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2019.12.17

ルイス・カーン最晩年の住宅「コーマン邸」
フィラデルフィア郊外、約8000坪の敷地にレンガと木の箱で
つくられた美しい住宅です。

広大な草原を望む北東へ配置されたリビング空間(リビングブロック)と
南西の寝室空間(スリーピングブロック)という構成。
シャピロ邸、フィッシャー邸に見れた幾何学(正方形)へのこだわりは
ゆるみ、部屋と部屋の関係性から生まれるものへ主眼が置かれています。

「プランはルームの共同体である。ルームが互いにかかわりあうことで、
それぞれのルームは固有の空間性を強めていく。」
カーンの言葉です。
設計を始める時にまず、そもそも「その空間」はどのようなものであるべ
きか、「場の始まり」まで戻り建築の原初を探り続けたカーンの姿勢。
愚直なまでの建築への向き合い方が、カーン建築独自の美しさを生み出し
ているのですね。

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ルイス・カーン手描きスケッチ
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2019.6.19

名作住宅トレース、ルイス・カーンの「フィッシャー邸」
糸杉でおおわれた2つの木箱を45度傾けてくっつけたなんとも
魅力的なお家です。

フィッシャー邸ではカーンが50年代に追求した2つの手法
・空間を分ける (スリーピングブロック リビングブロック)
・正方形から始める 
とともに
・斜めの配置(斜めの見えがかり、奥行き)
が使われています。
「斜めの配置」を使うことで幾何学の固さがゆるまり、また外壁が
すべて違う方向に向くことで様々な表情の光が室内へ入ってきます。

良い建築はプランが美しく何度眺めても飽きることがありません、きっ
と建築家の人柄や哲学のようなものが詰まっているからなのでしょうね。
今後も名作住宅トレースを続けてプランの奥にあるものを紐解いて
行きたいと思います。

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ルイス・カーン手描きスケッチ
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2019.4.5

名作住宅トレース、今回はルイスカーンの「エシェリック邸」
明快なコンセプトとプラン、抽象画のような美しい佇まい。
何度も写真集を眺めている大好きな住宅です。

プランは1、2階とも西側から4分割にゾーニングされており、カーンの言う
「サーバントスペース」(仕えられる空間)「サーブドスペース」(仕える空間)
が交互に並ぶ構成。
またカーン独特のFIXガラスの「見るための窓」開閉木戸の「通風の窓」を
組み合わせる開口部もこの住宅で完成したとの事、
「通風の窓」は雨掛かりを避け引っ込むため堀の深い印象的な外観が生まれます。

断面を見ると高さはずいぶん小ぶりなサイズ、最高高さが6m程度
実際に眺めるととても良いスケール感なのでしょうね。
また階段も見どころ満載(笑)、手摺と柱、壁と木板、柱と木板、
各パーツの接合部が丁寧に納まっておりこうした細かいディテール
が凛とした美しい空間を支えているのですね。
いつか実際の空間を体感してみたいです!

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ルイス・カーン手描きスケッチ
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2018.6.16

正方形に屋根の掛かった4つのブロックが連結された「シャピロ邸」
ルイス・カーンの1950年代の設計手法がよく表れた住宅です。
50年代のカーンの設計を見ると突如「正方形」がプランの骨格として使われる
ようになってゆくのが分かります。
これはカーンが「リビングルーム」「ダイニングルーム」などという名前のつ
けられた部屋を嫌い、そもそも人がくつろぐ空間とはどうあるべきか、食事を
する空間とはどうあるべきか、空間を根本から問い直そうとしたしたからです。
その時に拠り所としたのが幾何学「正方形」
「食うところ」「寝るところ」など空間の用途を分けたうえでそれぞれの用途
にひとつの正方形スペースユニットが割り当てられる。
その空間単位を連結させていくことで建築を構成してゆくという設計手法です。

シャピロ邸のアクソメを描いてみると4つの同じ大きさの正方形のスペースユニ
ットで構成されている事が良く分かります。

カーンの40年代の住宅「ワイス邸」「ジェネル邸」などではプラン上ではリビング
ブロック、スリーピングブロックと分けられていましたが、屋根は全体を覆うよう
におおらかに架けられていました。
このシャピロ邸ではそれぞれのブロックで屋根が完結するため40年代の住宅とは
外観が大きく変化し、カーンの建築独特の佇まいが生まれています。
またユニットの四隅の中空柱にユーティリティを割り当てる「サーブド&サーバン
トスペース」という新しい概念も見ることができます。

「誰々の家」ではなく”HOUSE”という抽象的な概念をストイックに追い求めたカー
ンの姿勢が生み出したシャピロ邸、神殿のような神々しい雰囲気すら感じます。

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その他ルイス・カーン手描きスケッチ
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2018.4.19

ルイス・カーン1940年代後半の作品、ちょうど前回トレースした
「ワイス邸」と同時期に設計された住宅です。

プランを眺めるとやはりワイス邸と同じ手法でつくられた事が良く
分かります、

➀ 伝統的な素材、石・木・レンガを使う
➁ 建物の内部と外を結ぶ「中間領域」をつくる
➂ 「リビングブロック」と「スリーピングブロック」へ空間を分ける

最終プランでは読み取れませんが、初期案をみると玄関前のポーチに
はパーゴラが掛けられ玄関ホールの奥には石壁で囲まれた中庭が計画
されています、まさに2つのブロックのあいだに「中間領域」を差し
込もうとしていたのですね。

このジェネル邸を読み込んでいくと、高低差のある敷地に呼応する
ような巧みな断面計画と、ゆったりと掛かる美しい屋根が特徴であ
る事が分かります。

1950年代に入るとカーンは正方形(幾何学)の独立したユニットを
組み合わせ並べるという手法を追及します。
ワイス邸やジェネル邸のような全体をつなげる屋根の存在感は無く
なり、フィッシャー邸やエシェリック邸のようなキューブが並ぶよ
うな形態が際立ってきます。

個人的にはブロックは分けつつも全体はゆったりとした屋根でつな
げるというカーンの建築はとても魅力的だし、まだまだ追及する可
能性のある手法だなぁ・・と感じました。

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ルイス・カーン手描きスケッチ
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2018.2.18

建築家の斎藤裕さんが「ワイス邸が分かればカーンがわかる」というワイス邸、
カーンはここで得た手法を通して後の珠玉のような住宅をつくりだします。
その手法とは
➀ 伝統的な素材・石・木・レンガを使って家をつくる。
➁ 建物の内部と外を結ぶ「中間領域」をつくる。
➂ 空間を分ける、住宅を「リビングブロック」と
  「スリーピングブロック」に分ける。
です。

上記の特徴を頭に入れながらプランを眺めるとその構成が良く分かります。
住宅はガレージ棟・リビング棟・寝室棟の3つのブロックに分かれ、リビング
棟と寝室棟の間には頭上にパーゴラがかけられたポーチ(半戸外空間)がつく
られています。
素材は石・木・ガラスの3種類が使われ重心の低い佇まいとなっています。

断面を見るとなだらかに南へ下がる土地にガレージ棟、リビング棟が高さを
変えて配置されています。リビング棟、寝室棟は一枚のバタフライ屋根が掛
かり、軒先の水平ラインがビシッと通っています。
後の作品では分けられたブロックそれぞれに屋根が掛けられるのですが、ワ
イス邸ではブロックは分けつつも屋根は一枚でまとめているところが興味深
いです。
古典的な独自の魅力を放つカーンの住宅、今後もトレース研究します。

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ルイス・カーン手描きスケッチ
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